ジカウイルス感染症では熱よりも発疹に注意が必要です
昨年社会的に話題となった「ジカウイルス感染症」について、国立国際医療センターが6月29日にメディア向けにセミナーを開催しました。セミナーでは、山元 佳先生(国立国際医療センター 国際感染症センター)が、本症の最新知見と今夏の予防策について講演を行いました。
講演の要旨は以下の通りです。(CareNet)
妊娠初期は要注意
1947年アフリカでジカウイルスが発見されて以来、感染が拡大。2015年には、南米・中南米での大流行が報告されたと現在の感染動向を説明した。ジ カウイルスに感染すると現れる1番の症状としては、発疹であり、次に関節炎、結膜充血、頭痛、筋痛などであり、発熱の割合は多くないという。潜伏期間は14日以内と推定され、不顕性感染が80%以上、また、ギランバレー症候群、急性弛緩麻痺との関連が取り沙汰されている。診断は、RT-PCR法(発症から7日以内)か抗体検査で確定され、血液<尿<精液の順に長く持続検出されると推定されている。
ジカウイルス感染症で問題となるのは、妊婦が妊娠初期に感染した場合、胎児が小頭症で産まれることとの関連であり、ブラジルやフランス領ポリネシアからの報告で、ジカウイルスは先天異常を起こしうるとされている。最も影響があるのは、妊娠初期(14週まで)であり、先天感染率は風疹と同等とされている。
米国では、すでに流行国渡航中か渡航後2週間以内のリスク地に非居住の妊婦、リスク地居住で発熱・皮疹などの症状のある妊婦は、疑わしい症状があれば検 査をするという。また、超音波検査で小頭症や脳内石灰化が確認された妊婦は再検し、母体の感染が証明できれば羊水検査実施など、暫定的な検査指針が示され 対策が講じられている。
ジカウイルス感染症の予防
本症の予防のためには、流行地域への渡航回避、流行地域での防蚊対策のほか、感染者や流行地域渡航者との性交渉のタイミング、同じく妊娠計画のタイミン グが必要とされる。とくに性交渉において、同症感染の男性については6ヵ月間は性交渉の際にコンドームの使用を、また、流行地渡航中の性交渉の際にも必ず コンドーム使用。また、流行地から帰国した男性は症状がなくても8週間は同じく使用するように米国では推奨されているという。
防蚊対策については、幼虫であるボウフラの温床を減らす、袖の長い服で露出部を減らす、蚊帳内や室内で眠る、蚊忌避剤の使用などが勧められている。蚊忌 避剤は、DEET20%以上を含有したものが望ましいとされているが、わが国では最大12%含有のものしか販売されておらず、約2時間ごとに塗り直しが必 要となる(最近発売されているイカリジン5%配合剤はDEET12%と同等)。
また、DEET使用時の注意点として、
・汗・水で流れたらその都度塗りなおす
・日焼け止めとの併用はよいが混合しない(最初に日焼け止め→20分後→蚊忌避剤を塗る)
・粘膜に塗らない(また10歳以下の小児には自分で塗らせない)
・リストバンド方式は使わない
・合成繊維は溶解するので注意
・皮膚過敏症の既往者には接触皮膚炎を生じさせることがある
などが挙げられている。なお、DEETの妊婦への安全性については、基本的に安全に使用できるとされる。
最後に「現在、ジカウイルス感染症のワクチン開発などが進められているが、完成までまだ時間がかかる模様であり、現時点でできる防蚊対策とコンドームを使用した適切な性交渉などで感染の回避をはかってほしい」とレクチャーを終えた。
院長コメント
ジカウイルス感染は発熱よりも発疹に注意することと、感染経路は蚊に刺されるだけではないことが重要です。
今年はリオオリンピックです。もしかしたら世界的な規模で感染が広がるかもしれません。
DEET虫除けを適切に使い、この夏を乗り切りましょう!