コロナウイルスに打ち勝つために 敵を知ろう!編
パンデミック宣言が出されてはや3ヶ月が経ちます。
世界の首脳がこぞって今回のパンデミックを「戦争」と表現します。今は戦時下なのだと。おっしゃっている意味はわかりますが、感染症を特にウイルスによる感染症を「戦争」と表現することに私としては少々違和感を覚えます。確かに人の命に関わることで立ち向かわないといけないですが、どうもウイルスは人間に対して戦争をふっかけてきているわけではないようだからです。受け手の人類が勝手に戦争をふっかけられていると思って慌てているだけです。しかもそもそも論ですが、もしこれが「戦争」と表現するとしたら人類はおそらくこの戦争には勝てないと思います。唯一根絶宣言の出した天然痘もワクチンによってウイルスが一旦いなくなっただけで叩きのめしたわけではないからです。
しかし私たちはこの苦境を乗り越える必要があります。どういう考え方がいいのか。
今回はそのためにウイルスについてよく知っておく必要があると思いますのでウイルスについて説明したいと思います。
まず、ウイルスは正確な表現として非細胞性微生物とされています。生物か生物でないかの議論がずっとなされてきていて、生物の定義からは外れているので一応生物ではないという考え方が一般的です。
生物の定義は3つあります。①境界があること。②複製(分裂)すること。③代謝機能を持つこと。ウイルスは①はありますが③はありません。②は自己複製はできず感染先の細胞にやらせるという方法なので微妙なところです。しかし定義を3つ満たさないので生物ではないという考え方が主流というわけです。
私が感染症研究所のウイルス2部というところで勉強させて頂いていた際先輩の先生方が良くウイルスは意思を持たないある現象を引き起こす物体という表現をしていたのを覚えています。
確かにウイルスは病原体として注目されていますが、研究手法として利用したり、最近はCF33という抗ガン治療に用いたりされつつあります。進化にもウイルスは活躍していて、キリンの先祖は首が短いのに突然長い首を持つキリンが現れたのはウイルスによる進化だと言われています。悪いことばかりをしているわけではないんですね。
ただ、上の3つの定義はあくまでも人間が勝手に作った定義であって、遺伝子を運んで病原性を持っているならそれだけでも生物として考えられるのではないかとも思います。
生物か非生物かの議論もさておきながらウイルスの驚くべき実態があります。
まずその大きさです。
コロナウイルスは直径が100nM(ナノメートル)とされています。とても小さいです。
ピンと来ないですよね。実は人間の大きさと約1700万倍の違いがあります。
ざっと計算すると、もしコロナウイルスが170cmの人間大だとすると人間は約3万kmの大きさになります。これは地球一周4万kmの4分の3週の長さになります。もしコロナウイルスがゴルフボールだとしてもゴルフボールは700kmの大きさになります。東京鳥取間の距離に相当します。
マスクの穴が5μmですが、ウイルスはその50分の1しかないので簡単に通過するわけです。ただ、マスクに一定の効果が期待されることは4月6日の「新型コロナウイルス感染対策」というブログで詳細を述べていますのでご参照ください。
ウイルスは6000種類以上あり一説には1億種類あると言いますが、大まかには7種類程度に分類されます。その中でも主な種類としてDNAウイルスとRNAウイルスがあります。コロナウイルスはRNAウイルスです。DNAウイルスは防御に強く攻撃性に弱い特徴がある一方、RNAウイルスは攻撃力はありますが防御に弱く変異しやすいという特徴を持っています。
そのためRNAウイルスはどんどん形を変えていく可能性があるのでオーバーシュートさせてはいけないということになります。自粛が大切な理由の一つです。変異すると厄介です。
ただ寒さより温度に弱いところがあるので冬場にはやりやすい傾向にあります。インフルエンザウイルスも同じです。暑い地方でも蔓延しているから関係ないと言われていますが、間違いなく冬より夏の方がこのタイプのウイルスは元気度は落ちると思います。
またコロナウイルスの特徴としてエンベロープという皮膜を持っています。これは脂質が主な構成要素でアルコールや洗剤にとても弱いです。
ですからアルコール、洗剤での手洗いが大切になる理由となります。
また最近の研究では、コロナウイルスはプラスチックに72時間、ステンレスに48時間、銅に4時間、段ボールに24時間程度生存していると報告がありますがその時間同等数生存しているのではなくそれくらいで約1000分の1に減少するようです。ただし空気中のエアロゾルでは3時間経過しても6分の1しか減少しないようです。
換気が大切と言われている理由ですね。
また、便には24〜48時間生存するようです。便器も長時間生存している可能性が高いので便を流したら安心ではなくしっかり掃除するようにしましょう!
エンベロープのないノロウイルスに比べて消毒には弱いです。しっかりこまめに消毒をすればウイルスの悪さも最小限にできるでしょう。