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クリニカルイナーシャ
クリニカルイナーシャってご存知でしょうか?最近臨床で問題になっている事象です。
例えば高血圧の患者さんがいらっしゃるとします。
「高血圧であるにもかかわらず治療を開始しない、またはガイドラインで示されている降圧達成目標値よりも高いのにもかかわらず、治療を強化せずそのまま様子を見ること」を意味します。これにより不十分な血圧管理が継続されることになり、結果的にその方の予後に悪影響を及ぼす可能性があります。
診察室での血圧がちょっと高め、150/90だった。
「ご自宅の血圧はどれくらいですか?」と訊ねます。
「これより低めです。大丈夫です」
「具体的にどれくらいですか?」
「130から140くらいですかね。下の血圧は90ちょっと切るくらいかな」
という会話がよくあります。この状態は実は降圧強化が必要なんです。でも話の流れでどうも患者さんはこのまま様子を見てみたい。自覚症状もない。主治医としても患者さん希望を尊重してあげたいなんていうシチュエーションです。
「じゃあもう少し様子を見ましょうか」
となってしまいがちです。
これがクリニカルイナーシャなんです。
本来は高血圧ガイドラインに則って厳格な血圧管理が心臓、血管系の合併症予防にとても重要であるエビデンスが揃っています。このことがもっと周知徹底される必要があるかなと思います。そのためには医師がしっかりとエビデンスを学び、勉強し続け、患者さんにとって一番の利益をもたらせられるよう日々考えていくことが大切だと思っています。